男一匹エレクト郎
動物園、水族館、植物園、電気屋、デパ地下。
これが僕の興奮する場所です。僕の興が奮する場所です。
その内のひとつである電気屋、ビックカメラに行きまして、買いもしないのに色々いじくってきました。高級ヘッドフォンを聴き比べたり、マッサージチェアで天国への階段を登ったり、新しいiMacをペシペシしたり、それはそれは有意義な時間を過ごしました。
ダイソンの掃除機と10万円の炊飯器とパイオニアの一番新しいCDJに恋をしてしまい、妄想でレジに運ぶと妄想店員が「お届けは2年、いや3年後になります」と言ったので気長に待つことにします。10万円の炊飯器のご飯、一度食べる機会があったんですがシャレになりません。美味すぎます。あれで卵ご飯と納豆ご飯を毎日交互に食いたいです。
オーディオコーナーの田園調布こと、ピュアオーディオのコーナー。数十万円するアンプやスピーカーを遠い目で見ていると、五分刈りメガネのオッサン顔ながら、クネクネした思春期特有の動きと肌ツヤ、そしてフィットしてないブレザーから一目で中学生とわかる少年を発見。手にはパンフレットらしきものを持っている。
(なるほど、少年。君は音楽が好きなんだな。同級生たちがTVタレントに恋をするように、ハイブリッドなオーディオに恋をしちまったってわけだ。いいぞ少年。だがな、ここのブツの値段を見てみろ。モノによっちゃあ車より高い。チャリンコじゃないぜ。自動車だ。もう少し大人になった時、そう、君が十分にお金を稼げるようになったらもう一度ここに来るんだ。……ちなみに俺は大人だけど心が少年だからまだ買えないんだよ。…なんか文句あんのかクソガキ!とっととアイワのコンポ買って帰りやがれ!)
なんてことを考えながら見てると、少年が何やら店員に指図をしている。店員はいそいそとアンプとスピーカーを接続している。どうやら指定の組み合わせで試聴をするつもりらしい。
なかなか図太いやつだ。買う気もないのに店員使って試聴ときたもんだ。
少年はハイブリッドサウンドを聴きながらパンフレットを指差しつつ店員と真剣に話している。ふと気が付くと、さっきまで隙だらけだった少年が、別人のようにキリッとしている。ビジネスには一切の妥協を許さない、その筋の業界では“計算機”と呼ばれる凄腕エージェント。そんな顔つきだ。
まさか…………買うの?
メガネの奥の瞳がキラリと光る。
その瞬間、少年はあの隙だらけの笑顔に戻り、店員と談笑しながら歩いていった。
レジの方へ…。
なに聴くの?ねえ、なに聴くの??
そのスピーカーから一体どんな音が飛び出して君を包むの?
君、かなりの高確率であと60年は生きるよ?いきなり天井?
20歳くらいで音楽の興味なくなるかもよ?
恋愛とか風俗とかさ、女の子のカラダってすげぇんだから。
てゆーかお金は?買ってもらうの?お父さん何してる人?
親御さん紹介してくんね?いろいろやるから。面白い顔とか。