別れと出会いと別れ
久しぶりに髪を切った。半年近くぶりに。
伸びに伸びた髪の毛のお陰で、最近は周りに散々な言われようだ。
「小汚い」
「うすら汚い生き物め」
「気持ち悪ぃーんだよ、カス」
「バケモノよ、立ち去れ!」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」
そんな日々とはオサラバ。
僕はスッキリ爽やかに生まれ変わったんだ。
ゴキゲンで美容室を出て駅へ向かう道中、女の子に逆ナンをされた。
潤んだ瞳の可愛らしい彼女は、どうしても僕とお茶がしたいらしい。そしてそこで良質な毛皮製品の話がしたいそうだ。本来すごく高価な毛皮製品を安く手に入れる。どうやら彼女はその術を知っているらしい。しかも長期の分割払いも可能だそうで、収入の少ない僕でも、無理なく良質な毛皮製品を手に入れることが出来るという。
彼女の目は真剣そのもの。
よほど髪を切りたての僕がタイプらしい。腕をグイグイ引っ張る強引さすら見せている。
潤んだ瞳の可愛らしい強引な彼女の、真剣な気持ちに応えて、僕はこう告げた。
「暑いからいいです」
拒まれたことが余程辛かったみたいだ。
潤んだ瞳の可愛らしい強引な彼女は、混乱してしまったんだろう。
彼女はきびすを返して、手当たり次第に道行く男性に声をかけ始めた。
君の気持ちに応えられなくてごめんよ。
さようなら、毛皮売りの少女。
Kitty / The Presidents of The United States of America